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『吸血鬼のおしごと⑤ The Style of Master』感想

――おまえのこころを、ぼくにくれ

吸血鬼のおしごと〈5〉The Style of Master (電撃文庫)吸血鬼のおしごと〈5〉The Style of Master (電撃文庫)
(2003/06)
鈴木 鈴

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昨日のレビューでは全く触れませんでしたが、実は四巻、かなりピンチな感じで終わっています。
主人公・月島亮史は吸血鬼の弱点である銀製の武器を携えた『組織』の吸血鬼たちに苦戦し、
嫉妬の炎を燃やして襲い来る上弦によって、レレナは絶望的な逃避行を強いられることに。

なんとか学校に逃げ込んだ亮史ですが多勢に無勢、絶体絶命の窮地です。
まあ主人公ですから、こんなところで死にはしないでしょう。
果たしてどんなスリリングな展開で逆境を跳ね返すのか――という話に普通はなるところですが、
ダークファンタジーとして覚醒した『吸血鬼のおしごと』は斜め上を行きます。

残虐な吸血鬼『魎月』であった頃に立ち返った亮史のショータイムが繰り広げられるのです。
もちろん、ショーの演目は「ジェノサイド」。魎月様無双の始まり始まりです。

しかし、「俺TUEEEEE!!」がしたいだけの、いわゆる最強主人公もの、というわけではありません。
敵役である『組織』の構成員たちは、『主人』である生まれながらの吸血鬼によって、
理不尽に『従者』にされ、人間に戻ることを何よりも望んでいる可哀想な人たちなのです。
彼らにとっては、恨み募る『主人』への正当な復讐であり、悲願を遂げるための決死の努力。
そんな同情すべき人たちが、恐ろしい化物に立ち返った亮史によって、願い叶わず惨殺されていく――。
そういう悲劇として楽しむべく書かれている向きが多分にあります。

なので、主人公の亮史がもう完全に悪役、それもラスボスのオーラです。
おまけに、展開上の役柄だけでなく、やってること自体が完璧に悪役のそれ。
勧善懲悪ものの悪役でも、ここまで外道なのはそういないだろうという外道っぷりです。
豊富な戦闘経験によって多勢を翻弄し、心理を読みきって混乱に陥れ、まともな抵抗すらろくにさせません。
『主人』としての能力で敵を操り、不用意に近づいた仲間を殺させるとか、本当に容赦ないです。
人間に戻ったら一緒になろう、と約束した(死亡フラグを立てた)カップルに至っては、
捕らえた女の方を操り、その手で愛しい男を殺させるとう鬼畜行為まで。

中でも凄まじいのは、上弦の『眷属』である玄翁との一騎打ち時です。
『眷属』とは、『主人』に強い忠誠心を持った『従者』(あるいは『使い魔』)。
特に玄翁は、夜伽を命じられたりしているわけで、自分が亮史の代価品と知りつつの複雑な感情があるでしょう。
そんな彼を動揺させて戦いを有利に運ぶために行った挑発が、以下です。


(上弦とそういう仲になったもの同士いろいろと話し合おうじゃないか、と言って)

「あいつの性格とか、口癖とか、血の嗜好とか」
「お前と語る舌など――」

寝床での具合とか。
 中古とはいえ、なかなかよかったろう?
 なにを隠そう仕込んだのはこの僕――」



ひどすぎです。

本当に主人公、それもライトノベルのかと。
せっかくいい勝負をしていたのに、これに激昂した玄翁さんはたちまち不利に。
NTR属性がなかったのが致命的でしたね……!

さらに。
自分のことを肉バイブ程度にしか思っていないことは確実の上弦を、
それでも健気に想っている玄翁は、亮史に問います。なぜ上弦の求愛を断ったのかと。
それに応えて曰く、

「ふむ、そうだな、強いて言うなら――」
「しつこい女は、嫌いなんだよ」


うわぁ……。
もう月島さん、もとい魎月様、素敵すぎます。
ここまでダークヒーローに徹しつつ、しかも気取ったところを感じさせない主人公は中々いないでしょう。
テンプレ的なタイプのラノベ主人公にはうんざり、という方には高確率で非常な良主人公だと思います。
そういう方は、ぜひご一読を!


そんな主人公によって凄惨なスプラッタが展開され、バイオレンスアクションの趣が強い今回ですが、
ドロドロしているのは返り血だけではありません。もはや恒例の、ヒロインたちの情念も、です。

冒頭からダブルヤンデレヒロイン、舞と上弦の直接対決ですよ。
己の優越を誇示する女同士の粘着質な鞘当が行われた末、
挙句の果てに「私なんてこんなに情熱的に求められたことあるんだぜ!」と
過去のハードプレイ自慢とかしちゃい出す上弦様、玄翁さんマジ報われない……。
どこの昼ドラですか、これ!(笑)


続いては、自分の男に手を出した薄汚い泥棒猫と認識しているレレナを、ついに捕まえた上弦。
人質にするから生かしておいてやるけど、半吸血鬼だから簡単には死なないしと、盛大に気晴らし暴行を加えます。
それが、今でも読者の間で語り草になっている
ブロック塀で顔面擦り下ろし刑。

そして、

「かわいい顔が台無しだ! お前、まるで豚みたいだぞ!?」

純真無垢なヒロインが可愛い顔を豚みたいにグチャグチャにされるライトノベルェ……。

ちなみに、鈴木鈴先生はこのシーンについてあとがきで
「俺はサドじゃないぞ!? 絶対にサドじゃないぞ!?」(意訳)と述べられており、
これにより目出度く「黒作家」や「ドS作家」などといった称号を獲得されたのでした(笑)。


さらに最後を飾るのは、私イチオシの雪村舞です。
この二巻で亮史にふさわしい女になりたい、ならなければいけないと痛感した彼女の、
深すぎ、重すぎ、一途すぎな恋心がヤンデレ可愛く突っ走りします。

ちょうど亮史が敵にトドメを刺そうとしているところに遭遇する舞。
亮史の化け物としての本性を目の当たりにしても、彼女の想いは小揺るぎもしません。
むしろ、自身の本気を証明するために、その手で人を殺そうとさえして――

「あたしは、月島さんと一緒がいい。
 月島さんが汚れてるならあたしも汚れたい。
 月島さんが化け物ならあたしも化け物になりたい。
 ――月島さんが人を殺すのなら、あたしだって、殺すよ。
 だって、ずっと、そばにいたいから、だから――」


萌え死ぬ!

……いや、私は大好物ですけど、冷静に考えると、いいんですかね、これ?
ライトノベルで、つまりは十代の少年少女に対して、この子をヒロインと言っちゃって(笑)。
(ヒロインということは、当然肯定的に書かれているわけで……)

まあ、一般的な常識や倫理はともかく、個人的には、これこそが愛! これでこそ愛ですよ!
「殺してでも欲しい」か「君のためなら死ねる」の少なくともどちらかではなければ、愛というには軽すぎます。
そんなわけで彼女、雪村舞は、未だに私の中で忘れられないベストヒロインの一人です。

……あと、上弦も(笑)。
おっと、浮気性とか言わないで下さいね!? そもそも私は一夫多妻制支持者です!(キリッ



それと、これも今まで全く言及してきませんでしたが『吸血鬼のおしごと』、
というか鈴木鈴先生の特徴として、場面転換を多用される、ということが挙げられます。

その手法が、この巻では多大な効果を上げています。
登場人物の視点が絶妙な引きを残しつつ目まぐるしく変わり、
最初から最後まで非常にスリリングな展開の連続で、息もつかせません。
一秒でも早く次のページをめくりたくなるスリル、という点ではこの五巻がシリーズ中最高だと思います。



以上、ダークファンタジー・バイオレンスアクション・ヤンデレラブストーリーな『吸血鬼のおしごと』第五巻の感想でした。

テーマ : 小説
ジャンル : アダルト

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